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2019.12.20 イベント

カルティベイティブプロジェクト ④前例のない新たな挑戦

④前例のない新たな挑戦  
 

辻  今日の大きなテーマはカルティベイティブプロジェクトで、スポーツクラブコミュニケーターですか、そんな名前の仕事を
   している人はいませんが、どんな仕事ですか。
石川 前例がないので何でそういう職に就いたかというと、僕自身は先ほどの話ではないですが、やりきった後で全部出しきって
   空っぽです。積み上げてきたけれども空っぽ。だから、もっといろいろなことをインプットしたい。
辻  自分自身がね。
石川 はい。それはサッカーの練習とかプレーではなく、いろいろな人とのつながりで、いろいろな人の考えを知ることで、クラブは
   いろいろな仕事があり、まずクラブを強くするためにというのが大前提であります。その中で自分のできることは何かと引退直後
   に考え、だから次の職はもちろんなかったです。別に話が何かあったわけでもないし、でもFC東京で仕事をしたい。
   仕事をしたいなら自分でつくってしまえばいいやと思い、その思いを社長に……(笑)。たぶん当時、社長は「何を言って
   いるのだ、こいつは」と思ったと思います。自分はこのように現役のときに思っていて、もっとこうしたほうがいい、こういうこと
   ができるというのをダーッと社長室で言い、「考えさせてくれ」。
   それで1カ月後ぐらいに、「分かった。クラブコミュニケーターという名前で、このような仕事をしてほしい」。
辻  社長に言われた。
石川 でも、不安もありました。もともとないポジションなので、みんな「何をするのだろう」という興味をもってくれているのは
   ありがたいのですが、僕がサッカーをやってきた、その結果を出す過程とは一緒かな。
辻  クラブコミュニケーターは、具体的にはどんなことを日々やっているのですか。
石川 いろいろな部署を見させてもらい、例えば試合だったら試合のチームの運営とか、僕はずっとスタジアムのピッチのほうに
   いたので、そうではなく、おもてなしの立場の中でファン、サポーターとの接し方、スポンサーとの接し方もそうだし、あと運営とか
   広報とか、最近は地域連携、社会連携が多いです。僕は何でそこに力を注ぎたいかというと、サッカーでうまくなっていくのは積み重ね
   としてありますが、その成長曲線はサッカー以外のところにあると思っていて、そういうマインド、受け皿の一人ひとりの感度を
   もっと高めていきたい。
辻  それは選手に監督でもコーチでもなく、クラブコミュニケーターという立場で接することで、選手のそういう器のようなものに気づか
   せる役割といっていいの?
石川 選手に対してというよりは、もっと長いスパンで言うと子どもたちです。
辻  スクールとか?
石川 スクールとか、あとは地域の行政の方や、サッカーを知らない、興味をもっていない人たちとどうつなげていくかというところで、
   つながったうちにいる選手もそうだし、スタッフ陣、コーチ陣、あとはアカデミーといわれる普及とか育成の子どもたちが、いろ
   いろな人と接することにより、いろいろな感覚をそこでまた持てる。
   人としての幅を広げることもそうだし、サッカーをやっていると、どうしてもサッカーでは深掘りができますが、ほかの部分でもっと
   刺激をいろいろな角度から入れてあげることが必要かと僕は思っていて。
辻  具体的に、最近の事例でこんなことをやりましたというようなことはありますか。
石川 いま自分の中では、どんなことが起こっているか各部署で知ることが大事だと思っているので、その場所に身を置くこと。それと、
   最近で言うとサッカーにつなげたいので、障害者サッカー。
辻  ブラインドサッカーとか?
石川 ブラインドサッカー、デフサッカー、CPサッカー、電動車椅子とか、いろいろなサッカースポーツの価値を感じていて、例えば
   健常者と障害者といわれる人たちとの接点、つながりをそういう部分でサッカーを通じて。
   最初はいろいろ考えるじゃないですか。このように気を使わなければいけないとか、それも一つ大事ですが、どう
   コミュニケーションをとるか。
辻  結局、そこに行き着くのだね。
石川 だから、僕の中ではクラブコミュニケーターというのは、またその一つの価値かと思っていて、そう接することにより相手も喜んで
   くれて、逆に自分たちも得るものもあり、コミュニケーションをどう図るか。それはサッカーをする上でも非常に大事なところだし、
   生きていく上でも必要なことで。
辻  確かに。
石川 そういった部分は共生社会といわれる中で。
辻  つくっている?
石川 率先してやっていきたい。首都東京のクラブとして、そういう価値も高めていきたい。
辻  クラブ所属のスクール生は、すごくたくさんいるのだよね。何千といるのだっけ。
石川 スクール生は4000人弱ぐらいいます。
辻  そこのスクール生たちに直接、直宏君が出会ったりして、伝えていけるチャンスはあるの?
石川 いま積極的にそこに自分が行き、もちろん一緒にプレーもするのですが、僕はどちらかといったらサッカーで「スゲーな」
   ではなく、出会ったときに挨拶ができる。そして、サインとか写真とかとやったときに、「ありがとうございます」という
   言葉や、そういった子たちが当たり前のようにいるスクールもそうだし、親御さんもそうだし、僕はそのようにしてもらいたい
   からこそ、自分がそれをする。別に言葉で、ありがとうと言いなさいよとか言うわけではなく。
辻  率先して示していくような感じですね。
石川 そこに自分がどう身を置けるか、そこでどう自分が表現を……。表現をしようと思っているわけではないので、僕の中では
   それが当たり前の感覚なので。
辻  そう、当たり前の感覚だね。
石川 でも、当たり前の感覚でいる自分が、実は相手からしてみたら当たり前ではなかったり。
辻  よくあるね。
石川 それがコミュニケーションですよね。


続く・・・