4月3日に開催された「東京陸協ミドルディスタンスチャレンジ」の800m最終組で本学陸上競技部に所属する源 裕貴君(体育学科4年、美祢青嶺高)が中四国学生新記録を樹立、あわせて6月末に開催される「第105回 日本陸上競技選手権大会」の申込資格記録を突破しました。
今春で4年生になった源君は、2年生の春からインスパイア(本学スポーツ科学センターの測定施設)を活用し始めました。2年生のトラックシーズン終了時に測定した最大酸素摂取量(全身持久力の総合的な指標)は71.4mL/kg/minと、800m選手としては低くはありませんでしたが、ランニング時の酸素摂取量で評価するランニングエコノミーが今より著しく劣っていました(車に例えるなら、低燃費車のような状態)。その後、2年生から3年生にかけては、ランニングエコノミーの改善には成功しましたが、その分、最大酸素摂取量が低下してしまいました。
学生最後のシーズンを前にして、この冬は、最大酸素摂取量を以前のレベルに戻すため、早朝トレーニングの距離を増やし、ペースを速くすること、また、持久力の向上を目的としたトレーニングのペースを速くすることで、ランニングエコノミーを悪化させずに最大酸素摂取量を以前のレベルまで引き上げることに成功しました。
また2月末から3月の1週目にかけては、環境制御室(標高3,000m相当の環境を再現)で自転車を用いたスプリントインターバルトレーニングに集中的に取り組み、「たくさんの乳酸を生み出せる体」をつくり上げました。ランナーのための自転車トレーニングに詳しい吉岡利貢コーチ(体育学科教授)は「シーズンイン1か月前になってもトラック練習を行わないことは、危険な賭けでもあった」と語る一方、我武者羅になってランニングフォームが乱れることを嫌う源君にとって、動きを制御しやすい自転車での高強度トレーニングは、ランニング以上に筋肉に強いストレスをかけられて好都合だとも考えていました。
そして、これらの冬のトレーニングの成果は3月中旬から開始したトラック練習で早くも確認できました。全力に近いレベルでの300m走を繰り返すスプリントインターバルトレーニングで、昨年よりそれぞれ1秒近くタイムを縮めることができたのです。
日本選手権の標準記録を突破できる手ごたえを持って臨んだこの日のレースは、日本記録保持者の川元奨選手(スズキ)ほか、国内の上位選手が多数出場することに加え、前日本記録保持者の横田真人氏(TWOLAPS)がペーサーを務めて下さるという記録を狙うには絶好の機会でした。気象条件的には難しい中でしたが、源君は、冷静な走りで最後の直線でトップに立つと、2位に1秒の差をつける1分48秒52の自己新記録でフィニッシュしました。
各時期の体力を測定・評価し、課題解決に向けたトレーニングを適切に行えたことが、今回の記録更新に繋がりました。想定通り、早い段階で日本選手権の申込資格記録を突破できた源君は、これからもう一度トレーニングを積み直し、更に高いレベルに仕上げた上で、初出場となる日本選手権で表彰台を目指す予定です。「科学で強くなる」を体現する源君の今後の活躍にぜひご注目下さい。
※写真提供/髙木千咲子氏