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2024.08.26 競技サポート

パリ五輪の体重超過による失格騒動から考える“女性アスリートの試合に向けた体重コントロール”

今夏開催された2024パリオリンピックでは、日本選手団の活躍が光りました。
今大会で日本が獲得したメダル数は、海外で開かれた大会で過去最多となる金メダル20個、銀メダル12個、銅メダル13個、合わせて45個という結果でした。
選手はもちろん、競技に関わるすべての方々の努力の賜物であり、メダル獲得の有無にかかわらず、参加された方々・挑戦された方々に敬意を表したいと思います。

さて、スポーツに関わる者としてオリンピックを見る際には、栄光だけではなく、挫折や課題にも目を向け、将来の糧にする必要があると考えています。
そこで、今回の記事では「女子レスリング選手の体重超過による失格」から“女性アスリートの試合に向けた体重コントロール”について考えていきたいと思います。

IPUスポーツ科学センターの女性アスリート支援プロジェクトでは2020年度から「体重コントロールに関する実態調査」を行ってきました。
本調査では、女子大学生アスリートを中心にアンケート調査を行い、650名からの回答が得られました(所属先;西日本地域 5大学,北陸・東海地域 4大学,関東地域 4大学,社会人柔道チーム 1つ,高校柔道部 1つ)。

アンケート結果から、試合に向けて体重コントロールをするアスリートの割合は31.2%であることがわかりました。
ただし、競技種目によって体重コントロールを実施する割合に差があり、体重別階級制競技では67.9%審美系の競技では51.8%が減量を主とした体重コントロールを行うことがわかっています。
また、体重コントロールで苦労した経験について「ある」と回答した人は半数に上り、過度な食事や飲水の制限、発汗を促すための高温多湿の環境下での運動などが実践されていることがアンケートの回答から明らかになりました。

国際オリンピック委員会からは「非現実的な体重や体脂肪レベルの達成といったアスリートの健康を害する可能性のある圧力,行動,状況を,コーチ,チームドクター,その他の医療提供者,国際競技連盟,スポーツ統括団体側は認識する義務がある」との発表がなされていますが、実際には体重コントロールの実施や失敗はアスリート自身の判断や責任として語られることが多い印象です。
先述したパリオリンピックのレスリング女子50キロ級決勝の当日計量における体重超過で失格となったインド選手に対しても「減量の厳しい階級を選んだ選手本人の自己責任」という論調も散見されます。
試合後に一睡もせずに水抜きをして、最終的には髪を切り、採血までしたと言われている彼女の状況について、皆さんはどのようにお感じになるでしょうか。

 『正しく競技に取り組む』とは何か。

アスリートの健康を守りながら、勝利という結果に結び付けていくために何ができるのか。その答えを見出すことは容易ではありません。
そのため、スポーツに関わる一人ひとりが広い視野を持って取り組むことが大切になります。

今後も、女性アスリート支援プロジェクトでは、多様な取り組みを通して“考える機会”“資料となる情報提供”に努めてまいります。